大量採用の反面、「一体感ある組織づくり」への壁
ヤフー株式会社
国内インターネット企業の最大手・ヤフー株式会社は、2010年10月に北九州センターを開設しました。日本最大級のサービスを運用する企業が北九州の拠点にもとめる役割、そして北九州拠点で取り組んでいることとは何でしょうか。
北九州PD室長の戸高様と立ち上げメンバーの一人でもある櫃本様の2名にお話を伺いました。
※写真右が戸高様、写真左が櫃本様。
大量採用の反面、「一体感ある組織づくり」への壁
御社の事業は非常に幅広くございますが、その中で北九州センターで担っている業務を教えて頂けますか?
戸高:北九州は柱となる事業が3つあります。まずは収益の柱の一つでもあるインターネット広告に関する事業、そして決済金融に関わる事業、Yahoo!ニュースなどをはじめとしたメディアサービスのサポートです。会社全体の社員数は約6,000名で、そのうち約300名が北九州センターに在籍しています。
北九州センターを設立した当初は、インターネット広告を出稿いただいているお客様の対応やサポートを行うコンタクトセンター業務、広告審査などが中心でした。2011年の東日本大震災を経て、2014年からはBCP拠点(災害対策拠点)としても機能しています。この時、本社のある東京が被災したとしてもYahoo! JAPANのトップページが停止しないように、東京だけでなく北九州でもトップページをサポートするという事業方針が策定されました。
スタッフ数も多く順調に見えますが、北九州センター設立後に困難などはありましたか?
戸高:北九州に拠点を構えた際に大量採用を行い、現地採用したスタッフは9割ほどいました。一度に大勢の社員向け研修を実施するなど「早く他の拠点と同質のサービスが提供できるように」と努めましたが、さまざまな業界から人材が集まっていたため、スタッフ同士の連携や組織への定着が思うようにはいきませんでした。
そこで北九州センター全体でイベントを実施するなどして、自分の部署以外の人にも興味を持ったり、スタッフ全員が一体感をもてるような組織づくりを目指しました。少々時間がかかりましたが、現在では気軽に挨拶し合い、出張者や新しく入ったスタッフに対しても自然と声をかけるなど、スタッフ同士の関係がとてもフランクで和気あいあいとしています。
地域企業の協議会で知見を高め、市へ「働きやすさ」を提言
北九州に拠点を置いたことによって受けることができたメリットはありますか?
戸高:北九州センターのスタッフのうち約200名は、一般のユーザーから、広告主や広告代理店の方々までさまざまなお客様と仕事で関わっています。
北九州には地域全体で事業の質を高めようと約10社の企業同士が連携した協議会があり、さまざまな業種のカスタマーサポート担当者が在籍していますので、品質管理の研修を受けさせてもらったり、月に1回ほど情報交換や連絡会を行うなどして、互いに切磋琢磨し知見を高めあうことができるんです。こうした団体に参加できるのは北九州ならではの大きなメリット。スタッフのスキルも伸ばせますし、対応がスムーズになればお客様との関係性も強固なものにできます。
ときには、北九州で働く人たちにより働きやすい環境を提供するために、協議会として市に対し提言をおこなうこともあるんです。例えば「オフィスがある駅のそばに託児所を作ってほしい」とか「通勤経路に街灯を増やして欲しい」といった内容を協議会として申請しています。こうした要望は一社だけでは弱くなってしまいますが、各社の代表者が集まって意見を出すことで影響力を発揮できるのではないかと思います。
提言できるということは市との対等な関係が築けているということだと思うのですが、逆に北九州市から受けているサポートはございますか?
戸高:各社の課題解決には、速やかに対応してくださいます。市としても地域全体で5,000人規模の雇用をされていますし、産業を盛り上げるという点で北九州市役所のサポートは非常に手厚いと感じています。
先述した「働きやすさ改善」以外に、大学や短大・専門学校およびハローワークへの企業PR活動における補助金をサポートしてくださったり、各所へ訪問の際は市役所の方が同行してくださることもあり、さまざまな協力を得ています。北九州市が間に入ってくださることによって、徐々にパイプが増えていると感じますね。
地方拠点におけるキャリア選択肢の増大が今後の目標
社員の「働きやすさ」「暮らしやすさ」という面について教えてください。
櫃本:交通の便が良いので通勤に時間がかかりませんし、東京のような満員電車もありません。ささやかなことですが、満員電車が毎日続くと心身の負担になりかねません。ですので、そうした負担が少ないのは利点として大きいですね。関門海峡など自然豊かな場所も多く、博多のような都市部にも出やすいのでプライベートも充実しています。
戸高:「子育てしやすい」という声はよく聞きますね。北九州センターにかぎってですが、産休育休後の復職率は100%。また北九州センターだけの制度ではありませんが、子どもが12歳になるまで時短勤務ができたり、月5回までリモートワークができる「どこでもオフィス」という制度があるため、うまく活用しているスタッフも数多くいます。
今後、北九州拠点の目標は何でしょうか?
櫃本:地方にいても東京と同じように業務の選択肢が持てる、そんな環境を作れるように新たな視点や気付きをもっと発信していきたいですね。
戸高:北九州センターにはまだ空席やスペースがあり、東京じゃなくてもさまざまな挑戦ができる環境が整ってきていますので、今後もっと事業やサービスを盛り上げていきたいと思っています。
そうすることで北九州センターにいるスタッフのキャリアも広げていけますし、ヤフーのなかでも重要な拠点となるよう北九州センターの価値を高めていくことでしょう。
自由にキャリアを選択できる「ジョブチェン」という制度を活かし、もっと業務や職種を増やして「北九州で自分がやりたい仕事ができる」という体制作っていければと考えています。
地方拠点はまだ「東京にならえ」になりがちなところがある。しかし、東京で良しとされている福利厚生をそっくりそのまま地方に適用しても、うまく機能しないことがあります。制度やシステムを北九州の拠点に最適化して逆に東京へフィードバックをおこなうなど、引き続き、地方のスタッフから働きやすい環境をつくっていきたいですね。
<プロフィール>
戸高明生(とだか・あきお)
ヤフー株式会社コーポレートグループ カンパニーPD本部 北九州PD室 室長
東京都内で社会人生活を送った後、北九州市にUターン(2010年にヤフー入社)。現在は人事総務業務を担当。
櫃本優 (ひつもと・ゆう)
ヤフー株式会社メディアグループマーケティングソリューションズカンパニー
オペレーション本部北九州審査部ディスプレイレビュー
北九州市出身。名古屋市で大学生活を送った後、北九州市にUターンし、新卒で金融系の会社に就職、その後転職し、現職 (2010年にヤフー入社)。現在はYahoo!プロモーション広告の審査業務を担当。