響灘菜園株式会社

響灘菜園では、「都市と自然との共生」を目指す北九州市で、大規模なハイテク温室による通年栽培により、カゴメブランドの生鮮トマトをお届けしています。

響灘菜園株式会社 代表取締役社長 那須野 崇之氏
カゴメ株式会社コンシューマー事業部生鮮野菜ビジネス・ユニット九州営業グループ
部長 笹木 幸夫氏
聞き手: 北九州市産業経済局誘致課 小園主任、椿職員

※文中の名称は敬称略とさせていただきます。

【北九州市への立地】

那須野: 響灘菜園はカゴメと電源開発の出資を受け、2005年5月17日に北九州市若松区の電源開発敷地内でトマトの生産・販売を開始しました。 2006年 7月4日が記念すべき初出荷となっています。私は、2007年12月1日にカゴメからの出向で新社長として着任しました。前社長の笹木も同じくカゴメです。
小園: 先ず、北九州市に立地した理由からお聞かせいただけますか?
那須野: まとまった平らな土地があること、トマト栽培に必要な水があること、日照条件が良いこと、質の高いスタッフが集まりやすいことなどがあげられます。全体的にバランスが良かったですね。
小園: 最初は、プレハブひとつのスタートでご苦労されたと聞きましたが?
笹木: その辺りは前任の私から話しますが、あるものといえばこの体と携帯電話のみ。最初の3ヶ月は何もない生活でした。パソコンもなければ、水すら無い生活です。8.7haの広大な原野を前に孤独感を感じて、一瞬で帰りたくなりました(笑)。でも、今思えばあの頃は周囲からとやかく言われることもなく、マイペースでやれたなと思い、懐かしく感じます。
那須野: いや、本当に大変だったと思いますよ。朝、コンビニでペットボトルの水を購入して出勤しないといけない状態でしたから。
笹木: 2005年7月1日、小倉駅に降り立った私には誰の出迎えがあるわけでもなく、不動産会社の女性職員に地理などを案内してもらったことを覚えています。少しずつ人の和が広がって快適さが増し、3ヵ月後にようやく慣れた次第です。今では立派な菜園が出来、約150人の従業員が働いています。あの頃からは大きく変わりました。今は最高に良いところだと感じています。
小園: 北九州は住みやすいところですか?
那須野: とても良いところだと思います。交通の便も程よく、新幹線(小倉駅)も空港もあります。大分、熊本などの行楽地へも行きやすいですね。
椿: お二人の出身地はどちらなのですか?
那須野: 私は静岡県出身で、日本海側に住むのは初めてです。関ヶ原以西に縁遠いので、いきなり九州勤務で驚きました(笑)。北九州は海がきれいですね。先日太陽が海に沈んでいく景色を見ましたが、とてもきれいだと感じました。
笹木: 私は富山出身です。富山は日本海側に面していて、曇天模様です。新社長は寒いところが苦手らしいです。
那須野: 栃木以北はちょっと・・・。静岡県の出身者は、(日当たりが良いせいか)ぼーっとした性格です(笑)。北九州の良いところは、東京と比べて魚介類が新鮮なところでしょうか。
笹木: すぐ近くの汐入りの里などでも新鮮な海産物を売っていますしね。
那須野: ここ(響灘)からすぐの沖に見える島はなんですか?
小園: 白島石油備蓄基地です。大型の石油貯蔵船があって、中に石油を備蓄していますが、釣りのポイントでもあるそうですよ。
笹木: 北九州は五市合併なので、それぞれ特徴があって楽しいですね。皿倉山(八幡東区)だとか、若松の北海岸(若松区)など良い場所があるし、歓楽街もほどよく広がっています。
那須野: 4月からは家族もやってきます。北九州市の人口増に一役買いますよ(笑)。

【トマトの栽培法】
小園: ここ響灘菜園で作られているトマトはどういったものなんでしょうか?
那須野: ここで作られている商品は「こくみトマト」「デリカトマト」として出荷されます。「こくみトマト」はスーパーなどの小売用です。「デリカトマト」は業務用で、箱詰め4kg入りで、フードサービス業界で使っていただいています。
小園: どういったスーパーで手に入りますか?
笹木: 代表的な店にはほとんど並んでいます。大体どこでも手に入るのではないでしょうか。「こくみトマト」はカゴメのブランド名で、由来は「コクがあって実が締まっている」という意味です。
小園: 「こくみトマト」のブランド名は全国的に統一されたものですか。
那須野: そうです。「こくみトマト」にもいくつか種類があってバラエティに富んでいます。
笹木: この「こくみトマト」ですがトレーサビリティがしっかりしています。店頭の商品がいつ、どこの菜園で収穫されたものかわかります。生鮮にこういった仕組みを用いるのはあまりないと思っています。食の安全性も叫ばれている中で、とても良い仕組みだと思っています。
小園: 確かにこうした取組みは、鮮度を見る目が無くても、日付でわかるので安心ですね。
那須野: パッケージに品番号とお客様相談センターの電話番号が入っているので、安心してご利用いただけるものと思います。
那須野: 一方、デリカトマトはサンドイッチやハンバーガーなどに使われています。ドリップが少なくて、果肉がしっかりしているというところがセールスポイントです。全国に向けて出荷されます。
那須野: 「デリカトマト」の消費は首都圏6割、関西地域3割ですが、九州にも市場はまだまだあると思っています。「デリカトマト」は、一度お使いいただくと、使いやすさからリピーターが多い商品です。意外と食通卸売り事業者さんからも、熟度や大きさ管理などの面で流通させやすいと好評をいただいます。

ハチの巣箱

小園: 収穫は、年中続くのですか?
那須野: 8月に種をまいて、11月から翌年7月まで収穫します。下の段から採っていって、最終的には茎が15mくらいに達します。8.7haの面積に約20万本栽培されています。
笹木: 広さをわかりやすく説明するとヤフードーム6個分です。この辺だとヤフードームがわかりやすいですよね。北九州市民球場だとわかりませんね(笑)。
椿: トマトの個数に換算するとどのくらいですか?
那須野: 1株に170個、20万株とし、3400万個ですね。20個入りの荷姿で170万箱になりますね。
笹木: ちなみに福岡県内のトマトの15%がここで栽培される計算です。
笹木: この地域は元々トマトの産地なので、菜園の立地にあたり、地元農家にご理解いただくため腐心しました。市の職員の方も全面で支えてくれたので、地元農家の皆さんとの関係も改善して今の菜園が出来上がりました。いろんな人の協力があってのこと、とても印象深い出来事でした。
那須野: 実は私も前にこの菜園の設立のプロジェクトに携わっていました。02、03年に作業適地の適合判定をして、まだ机上の絵だった頃の菜園を覚えています。具体化してうれしく思います。
笹木: 響灘菜園をご見学いただいた時、皆さん、広いこと、地面が無いこと、ハチがいることの3点に興味を示します。極めつけのハチですが、説明するためにとても勉強しました。
小園: 温室の中で、自然にハチが受粉しているんですね。
笹木: ちなみに、一匹400円です(笑)。2~3ヶ月と短命です。
小園: それは高価ですね。ハチミツとかも取れると良いのでしょうが。
那須野: トマトの花にはミツバチは適しません。花粉を集めるクロマルハナバチを使います。なぜなら菜園の中では風が吹かないため、受粉できない。私たちから見ても相当な働き者です。仮にハチがいないとして、人が同じ作業をするとして、時給に換算したら・・・考えられません(笑)。
那須野: また、トマトがCO2を吸収して菜園中のCO2濃度が下がるため、必要に応じてトマトの成長に必要なCO2を自動的に送り込みます。収穫、剪定作業などは人が行います。従業員は約150人いますが、菜園が広いため、人影は見えず、閑散とした感です。あまりに孤独になるものですから、中では常時音楽を流して作業環境を快適にしています。夏の暑さは酷ですが、冬は暖かくて心地よいです。

【今後の展開】

左:笹木氏、中央:那須野氏

小園: パンフレットの絵に拡張計画が描かれていますが、これからの拡張はあるのでしょうか?
那須野: 今は一休みしています。日本の農産物は本当においしいと思います。アジア各国の生活水準も高まりを見せていますし、日本のおいしい農産物が、世界で好まれ、輸出される時期が来ればと思います。
小園: 中国でも食文化が洋風化し生野菜を食べる習慣が増えてきていますので、おいしくて安全な日本の野菜需要は拡大すると思います。北九州の輸出品はやはり工業製品が多いので、こういったジャンルの輸出品も増えていけばいいですね。
那須野: そうですね。ここがアジアの食料供給基地になるなんていうこともありえる話だと思います。順調に需要が伸びてくればいいですね。港(ひびきコンテナターミナル)も近いですし(笑)。

【あとがき】
那須野様、笹木様、どうもありがとうございました!
笹木様は既に新部署にご異動されていたにも関わらず、設立当時の苦労話を熱く語っていただきました。
誘致課といたしましても、こうした立上げ時のご支援もしっかりとさせていただきたいと思います!

響灘菜園株式会社


北九州市若松区柳崎町4番

本日紹介したトマトは、以下URLに詳しく紹介されているほか、レシピも掲載しています。
ぜひご賞味下さい!
http://seisen.kagome.co.jp/

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