株式会社デンソー北九州製作所

株式会社デンソー北九州製作所は、八幡西区に本社を構え、カーエアコンやディーゼル燃料噴射機器部品を製造する会社です。1993年に日本電装株式会社 北九州製作所として設立され、2006年に株式会社デンソーより分離独立し、現在の株式会社デンソー北九州製作所となりました。
今回は、経営管理部総務室の小田室長にインタビューを行い、地元に密着した工場の様子を皆様にお伝えしたいと思います。

株式会社デンソー北九州製作所 経営管理部 総務室 室長 小田 雄三 氏
聞き手: 北九州市産業経済局誘致課 田中

※文中の名称は敬称略とさせていただきます。

田中:こちらに進出した経緯を教えてください。
小田:トヨタ自動車さんが、宮田町(現在の宮若市)に進出されたので、その宮田工場にデンソーの製品をタイムリーに供給することが進出の大きな目的でした。当時の末吉市長より、熱心な誘致活動を受けました。北九州市の提案も含め、進出候補地が何箇所かありましたが、当時の日本電装のトップがこの地がふさわしいと判断し進出が決定しました。
宮田町に20kmと大変近いこと、交通の便、特に高速道路が発達していること、電気・ガス等のユーティリティの確保が容易であること、100万都市であるため、(若干下回っていますが、)愛知県のような人材の奪い合いにはならず、安定して人材の確保が期待できるだろうということが進出の主な要因です。
田中:先ほど、社員の採用の話しがでましたが、採用や工場の雰囲気の話を聞かせてください。
小田:1993年に進出した当時、地元で若年層(18歳~19歳)の人材を採用し、全体の7割を占めていました。当時採用した社員が、今は班長クラスになって現場で活躍し、部下の教育にあたっています。デンソー北九州製作所として独立した会社になった時点で、進出当時採用した若年層が30歳代となりました。人員構成を見ると10代および20代の社員が少ない事から、分社独立後は定期採用にて安定した採用活動を行っていますが、人員構成のバランスをどう整えるかということが課題となりました。この解決にあたり、6ヶ月以上派遣社員で勤めていただいた方の中から、本人の希望に沿って、登用試験を受験していただき、正社員として登用しています。弊社にとって、即戦力を確保するという点と年齢間の人員バランスを整える点で非常に大きな役割を占めています。
こういった取組みを行うことにより、平均年齢も30歳代を下回る活気のある会社となりました。地元で採用し育った班長クラスが、地元で採用した社員を教えるという体制になり、大変良い環境になったと思っています。田中:社員さんの雰囲気についてはデンソー北九州製作所のHPで見させていただきました。工場の活気が伝わってきますね。以前のお話では、自転車で通勤している社員さんも多いと伺いました。
小田:私も出社前に「これはうちの社員だな」という自転車や徒歩の人に出合います。社名に北九州という名が入っているように、「地域に根ざした企業を目指したい」と弊社社長が常々言っております。こういった意味でも、雇用の面では地域に貢献できているかなと思います。
田中:デンソー北九州製作所全体では1,000名を越す社員を、また、北九州工場だけでも800名近くの従業員を採用し、地元の期待も大きいです。

小田:ところが、「デンソー」と言う社名は、意外と知られていないようです。車業界の方はご存知かもしれませんが、製造している製品が単体で市場に出回ることが無く、ボンネットの中を開けることのない女性の方には、特に馴染みがうすいようで・・・
田中:デンソーの社名は、最近、カーレースのロゴでみかけました。あれは結構目立ちますね。
小田:トヨタさんが参戦されており、広報活動の一環として、車体へ社名ロゴをプリントしています。

田中:今後は女性に向けて、いいPRができればいいですね。
小田:今、こういうご時勢なので、デンソーもテレビCM等は控えていますが、子ども3人組が工場見学をし、デンソーが開発している製品を紹介するテレビCMがあります。車の将来を考えたモノづくりをしていますという内容になっているので、デンソー本体がどんどん告知してくれればこちらは非常に助かります。(笑)
田中:工場見学といえば、デンソー北九州製作所は工場見学の受入もされていますよね。

小田:06年にデンソー北九州製作所になり、独立した企業として再スタートした時に、当初の工場では手狭であったことと、ディーゼル燃料噴射装置を製造するとういうことで、工場を増築しました。増築工事中は、工場見学を中止しましたが、増設工事も終わり、新しい工場を皆さまに見ていただきたいということで、昨年秋より見学コースの整備を行い、今年の4月から工場見学の受入を再開しています。北九州市の発行している観光冊子(北九州市産業観光)でも紹介されています。
また、福岡県の場合は、小学校5年生の社会科見学があり、福岡市からも工場見学の利用があります。そういった場面で皆さまにご利用いただければと思っております。
田中:小学校の社会科見学は、印象に残りますね。
小田:弊社工場の見学コースは、2階から見る形式ではなく、場内の通路を直接歩いてもらいますので、臨場感があると思います。ただし、子どもさんが盛り上がりすぎて、怪我をしないように、注意しないといけないと常々考えています。工場見学前の説明でも、施設には触れないで下さいとお願いをしています。(笑)
田中:北九州市を代表する工場なので、皆さんもぜひ見学に来てください。
小田:そうですね。個人的な話になりますが、私も小学生の時は、福岡市に住んでおりまして、工場見学は北九州市内の工場でした。八幡製鉄所さんの製鉄工場や東芝さんの電球工場、戸畑駅裏の明治製菓のドロップ工場を見学しました。今でも当時の記憶が鮮明に残っています。私が体験したような印象を今の子供たちにも体験させてあげたいと思っています。
田中:私も工業高校の進路担当の先生から工場見学の手配を依頼されることがありますが、中には、福岡方面からの依頼もありますね。その他に地元の学校との連携はありますか?
小田:小倉聾学校出身の方で弊社に入社された方が何人かいまして、昨年、小倉聾学校の校長先生より先輩から後輩へ伝える場を設けて欲しいというご依頼を受けて、学校の方へ先輩社員が出向きました。そこで、小倉聾学校の後輩に、「こんな仕事をしています。」という内容で弊社の社員が講演し、生徒から好評をいただきました。今年は父兄の方からも話を聞きたいとの申し出を受けており、仕事の上でのつらい事も楽しい事もあると思いますが、経済的にどう自立するかという内容で話しをする場があると聞いております。こういった取組みも含め地域にお役がたてればと思っております。
田中:ここで勤務している方が、また出身校に出向いて、職場の体験を伝えることにより、会社のPRにもなりますし、また、先輩がいると入る側の生徒さんも安心して入社できますね。採用の面でもいいサイクルが出来ていますね。
小田:そうですね。

田中:デンソー北九州製作所さんで作っている製品について教えていただきますか?
小田:デンソー北九州製作所は、デンソーのカーエアコンを製造する会社としてスタートしました。デンソーグループ全体のカーエアコン生産量は世界のNo.1のシェアを占めています。デンソーは製造する品種が100品目ぐらいありますが、そのうちの27品目が世界No.1の売上を誇っています。製造技術力が当社の自慢でもあります。デンソー北九州製作所では、エアコンの製造を行っています。
 また、インジェクタについては、シェアはNo.1ではありませんが、コモンレールシステムを世界で最初に開発しました。こういった高い品質の物をお届けする役割をデンソー北九州製作所は担っています。

田中:インジェクタは品質でもさることながら、環境負荷等に着目して、早くから取り組まれ、今の時代の流れに乗っていますね。
小田:ちょうど私が、デンソー本社の営業企画部にいた頃(94年~98年)に「コモンレール」という言葉が飛び交っていました。私にとっては「コモンレールって何だ?」っていうぐらいの頃だったのですが・・(笑)あれからもう10何年経ちました。それが、実際に商品として機能しているところをみると、これも何かの縁を感じます。また、長い期間を経て、世に出ているところをみると技術者、開発者が心血を注いだ結果だと思います。
田中:北九州製作所として、苦労した時期もあったと思いますが?

小田:はい、減産等の大変つらい経験がありました。おおきな物流改善等に積極的に取り組み、乗り越えてきました。弊社社長がいつも言っていますが、モノづくりの目指す姿として次のことを取り組んでいます。
「一歩、1cmにこだわった改善の積み上げと、0.1人工もムダのない少人化ラインの実現」という内容です。こういう小さなことを愚直に取り組んできたからこそ、今の工場の姿があると思います。
田中:そういえば、HPで見させていただきましたが、女性社員のスケジュールの中に、自分の持ち場と他の部署をまたぐ問題点についての話し合いが組まれていました。工場の現場にも定着しているようですね。
小田:そうですね。モノづくりのこだわりが、本当に浸透している会社だと思います。
田中:デンソー北九州製作所の工場の様子について、小田様に話をしていただきました。本日はお忙しいところどうもありがとうございました。

平成21年6月2日
デンソー北九州製作所本社にて
(中央:小田氏)

デンソー九州HP
http://www.denso-kyushu.co.jp/index.html
(インタビューこぼれ話)

デンソー北九州製作所の外観ですが、いい意味で工場らしくなく、周りの風景と調和しています。以前、私が工場立地法(工場緑化等の法律)を担当しており興味があったので、小田室長に工場景観について伺いました。北九州工場は、しらさぎをイメージして設計されたようです。また、西川幸生さんが出版している水彩画集の「新北九州101景」に紹介されています。この「新北九州101景」は、北九州の町並みを主に紹介していますが、工場を紹介している箇所は珍しいようです。インタビューを行った隣の部屋に西川さんが描いた原画が飾ってありましたので、写真を撮らせていただきました。

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