ディー・クルー・テクノロジーズ株式会社

ディー・クルー・テクノロジーズ株式会社は、平成16年6月に北九州市学術研究都市で創業し、アナログ設計開発、システム開発などを行っています。
今回は、九州・宮崎生まれの東京育ち、「子供の頃きかん坊だったこともあり、夏休みに親から親戚のいる宮崎に帰されて以来九州に愛着がある」という石川社長にお話を伺いました。

ディー・クルー・テクノロジーズ株式会社 代表取締役CEO 石川 明彦氏
聞き手: 北九州市産業経済局誘致課係長 今浪 勝利

※文中の名称は敬称略とさせていただきます。

今浪:北九州市に進出したきっかけはなんですか。
石川:元々、大手半導体メーカーにいたのですが、当時、北九州市の廉屋氏・鶴島氏からの依頼でアナログ回路設計の講師を引き受けたのがきっかけです(鶴島取締役は北九州市役所からの転職)。
当時、日本では、アナログの技術者が枯渇していると嘆いていた。アメリカなどはアナログ技術者がたくさんいた。国家が戦略的に育てていた。海外の方が技術が上だと言われていたのが悔しかったので、会社云々ではなく、日本人としてアナログ技術者を育成するんだというつもりで講師を引き受けました。
そこで、北九州市がエレクトロニクス分野の産学官連携に取り組んでいるということを初めて知り、北九州市の取り組みや職員の方々の熱心さから、“創業するなら北九州市で”と決めていました。
今浪:それまで北九州市のことはご存知でしたか。
石川:正直言って、知らなかったですね(笑)。鉄鋼の街ということくらい・・・。
今浪:創業のきっかけは。
石川:ここ(北九州市)に来た時に、「何かできるぞ!」と思いました。大学の先生や北九州市の方々と接していく中で、会社を作ろうと思った。
実際、それまでは、会社は本質でエンジニアの能力を使っていないと感じていた。エンジニアというのは、本来、能力の100%を設計や開発などに使いたい。そこで、自らそういう環境を作らないと変わらないと思い、そういう会社を作ろうと決めた。それと組込みシステム。アナログも組込みですが、ハードもソフトも分かって組込みシステムをやっている人は、実は少ない。
いろいろと思いをめぐらしている中で、ふと、あそこにはそれをやるだけの環境があるなと思ったのが北九州市だった。
アナログのツール・測定器が揃っている。何より、そこにいたのは廉屋さんはじめ熱心な北九州市の職員だった。これが本当の意味での動機。
今浪:創業するのは、なかなか勇気がいったのでは。
石川:はい。北九州市と心中するつもりです・・・(笑)。
今浪:社員を50人以上に増やさないという話を聞きましたが。
石川:先ほども言ったように、エンジニアの能力をフル活用したいということ。これが社長の仕事です。そのためには、人を大事にしないといけない。そのケアをするためには、多数、社員がいると出来ない。一人の人間が関わっていける範囲というものがある。私が関わっていける上限が50人と考えている。
それに、うちは上場しないと決めている。すべて自己資金。株主は全部、社員です。
今浪:それだと社員のモチベーションが上がりますね。
石川:そう。本質で人を大事にする。能力をフル活用出来る環境を作る。社長は、ぶれてはいけない。
今浪:石川社長にとって社長業とは。
石川:人に関わるということの延長線上。形で言えば、ピラミッドを潰した形で、その中央に社長がくるということ。社員全員がどのように考え、どんなことがしたいのかを把握しているのが社長。社長というのは、そういうミッションがあって当然です。
もうひとつ、うちの強みは私がエンジニアだったこと。エンジニアの気持ちがわかる。
今浪:社員からの相談も受けるのですね。
石川:モチロン!全社員と、月、最低1回。そこでプライベートのことも含めて相談を受ける。いろいろと分かった上で接するのと、何も知らないで接するのとでは違いが出てくるはず。要は人を大事にするということです。
今浪:福岡の拠点を北九州に集約するという話を聞いたのですが・・・。
石川:年内くらいを考えています。目的は、コミュニケーションの密度を濃くしたいということ。北九州市の良い環境(ツールや実験機器など)の中に集約したい。いわゆる選択と集中。
今浪:それは北九州市と一緒に伸びていこうとの気持ちですか。
石川:そのとおり!北九州市が本社だから。北九州市の25㎡からディー・クルーは始まった。
今浪:来る前と来た後の北九州市の印象は。
石川:来る前については、申し訳ないけど、知らなかったのでイメージはない。
来た後のイメージは、土地というよりもどこの地域にもない人のパワーを感じたね。そこから紐解いていくと、元々、日本の産業革命を主導した土地だということに行き着く。にもかかわらず、水も自然も豊富だし、なにより食物が美味い。特に魚。
それと、先ほども話したが、職員の目に力がある。なかなか自治体の職員でこんなに迫力のあるところはないね。
今浪:今後の北九州市の進むべき道について一言お願いします。
石川:半導体や自動車産業など、ある程度は集積している。今後は、ハードではなくハートを集積していくことが大事なのではないか。そういうマインドを持って、この土地に、いろいろな素材が溶け込んでいくというのが良いのでは。そうすることによって住み良い街が出来る。
これからは規模ではなくて、影響力!
今浪:社員が独立するのを応援していますよね。
石川:社員が独立する時に「ディー・クルーのスピリッツを広めたい。」と言ってくる。だから、独立後も応援している。今は大企業も連携というのが流行っているが、独立した社員とは、現在も同じ方向を向いて仕事をしており、うちもそういった社員を含めると結構な人数になる。パワーは大企業並みかも・・・。
今浪:最後に会社の理念をお願いします。
石川:まず、「本質を大事にする」ということと、「人を大切にする」ということ。うちの社員は、本質で仕事をするために、ディー・クルーに入ってくる。ディー・クルーで、自分は何をするんだ、という明確な意志と覚悟をもって入ってくる。「目的感」と言っていますが、そういう人たちの思いや熱意や夢を大事にする。それから、社員の家族、パートナーさんも大事にする。人を大切にしないと、絶対、いいものはできない。
次に、「コミュニケーションを大切にする」。私たちは、コミュニケーションするものを作っている。コミュニケーションするものを作っている人達が、ろくにコミュニケーションもできないとしたら、いいものはできないでしょ。それから、うちは、アナログ、組込み、システムという3つの分野の技術者が集まって、一緒に仕事をしている。だから、一人ひとりが「のりしろ」をもって、関わり合わなければ、頭脳と頭脳の「合わせ味噌」もうまくいかない。
北九州市は、環境に力を入れていますよね。ディー・クルーのエコロジーを「デコロジー」と称して、商標登録しているんですが、私たちは、エコロジーを環境保全だとか、リサイクルや、技術の範疇だけで考えていない。今、人類や、人類以外の生物を不幸にしている、人間の「エゴ」というものに対して、濁点を取って「エコ」にする、という強い目的感をもって、その上で、自分たちの技術を、人々が「本質の生き方」や「自然との共生」ができるために、活かしていこうと思っています。
先日、「200年街区」の取り組みの話をお伺いして、非常に感銘した。単に、リサイクルや省エネルギー・省資源をやろうとしているのではなくて、人間の心やコミュニティのことまで視野に入れておられる。これは、うちの考え方と相通じる。先端的な技術を、エコロジーだとか、とにかく「本質の生き方」をめざす人間のために、自然との共生のために、活用して行きたい。そういう面で、北九州市との繋がりが深まって行くのではないかと思っている。
「技術」の会社ですが、「技術」だけを売りにするのでなく、真摯な「こころ」と「生き方」を、皆さんにお伝えできれば、と思っています。
今浪:本日はお忙しい中、ありがとうございました。ディー・クルー・テクノロジーズ株式会社


左:鶴島取締役 右:石川代表取締役CEO

〒808-0135 北九州市若松区ひびきの2番5号
電話:093-695-3657  FAX:093-695-3658
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