フロンティアカーボン株式会社
フロンティアカーボン株式会社は、有機薄膜太陽電池をはじめ、次世代半導体材料用などで応用が期待されているフラーレン・フラーレン誘導体の製造販売を行っている、日本のオンリーワン企業です。
フロンティアカーボン株式会社 代表取締役社長 有川 峯幸氏
聞き手:北九州市産業経済局誘致課 吉田 智子
※文中の名称は敬称略とさせていただきます。
【フラーレンって?】
吉田:基本的なことでお恥ずかしいのですが、フラーレンという言葉は聞いたことはあるもののどのようなものか分かりません。おしえていただけますか?
有川:フラーレンは炭素原子が球状のネットワーク構造となっている炭素分子です。サッカーボール状のC60がその代表格です。
炭素といえばダイヤモンドや黒鉛が思い浮かぶと思いますが、溶媒に溶かすことができる、そして分子毎に分離でき単一の純粋物質として取り出せるという点が他の炭素材料と違う点です。
実は、発見されたのが25 年前という新しい素材なんですよ。人工に合成する手法が見つかったのがわずか20 年ほど前です。
吉田:25 年前に発見されたばかりなんですか!? それから20 年で実用化されていることにも驚きます。どんなことに応用されているのですか?
有川:身近なところで言うと、スポーツ用品、化粧品、潤滑油の添加剤等ですね。
吉田:そういえばフラーレン入りの化粧品のことは聞いたことがあります。抗酸化作用があるので老化防止やメラニンの生成抑制によいといいますよね。
有川:美容整形医師が処方するドクターズコスメを中心に化粧品展開されていますね。スポーツ用品では、ゴルフボールやバドミントン・テニスラケットのフレーム・ガットなどに使われています。ラケットは高強度、高反発を実現しながら衝撃が少なくなるので、スキルがある人に好評だと聞いています。でも、もっともこれらの分野は使用する量が少なくて、狙いたいのはやはりエネルギー分野や半導体分野といった産業用材料分野ですね。特に、近年は有機薄膜太陽電池や燃料電池への応用研究例が増えています。フラーレンの誘導体を用いた有機薄膜太陽電池とかですね。
有機薄膜太陽電池は、開発が進めば現在主流のシリコン型太陽電池よりもさらに構造や製法が簡便になると言われていて、柔軟性や大面積製造からの低コスト面が有利と期待されています。
吉田:柔軟性があって形が変えられるというのは、用途が広がりそうですね。
有川:リーフ(葉)状の有機薄膜太陽電池の試作例もあるんですよ(写真参照)。形状が変えられるというのはデザイン性がありますから、曲線を持った生活用品や建物に用いるときも使いやすくなると思います。
ただ、有機薄膜太陽電池に関する研究は、注目されている分、最近は過剰な感もありますので(笑)、今後どうなるかは気になりますね。
吉田:現在、研究体制はどういう状況ですか? 何人でされているんですか?
有川:フラーレンの応用研究は欧米では有機薄膜太陽電池くらいですが、日本ではその他に半導体プロセス材料分野、先ほど言ったスポーツ用品や化粧品のほか、ワックスなどの潤滑材、ポリマー、ゴム添加剤、金属のハードコート材、更に医薬品などにも展開していますから、研究対象も幅広いです。
現在の弊社研究開発員は10 名強で、総勢でも研究開発のベンチャーなので私を含めて15 名程度です。ですので、研究者が経理業務や製造もやりますし、マルチタスクなんですよ。私もいろいろやっているので大変です(笑)。
【ナノテクの国際会議が北九州で開催】
吉田:フラーレンをはじめとしたナノテクノロジーや有機エレクトロニクスに関しての活動をされたり、研究者とも活発に交流されているそうですね。
有川:この関連で今年11 月にマイクロプロセス・ナノテクノロジー国際会議(MNC2010)という最先端半導体素子のための微細加工技術をメインテーマとした会議が北九州市で開かれるのですが、協業いただいている先生方が運営していることもあり開催の手伝いをやっています。参加者は総勢300 名ほどになる見込みで、中国、韓国、台湾をはじめ海外からも参加がある予定です。
吉田:そんな大きな国際会議が北九州市で開かれるのはうれしい限りです。
有川:この会議は毎年国内の主要都市で開催されており、当然参加者は最先端の内容と白熱した議論に惹かれて参加していますが、同時に会議の前後で接する開催場所や開催都市の雰囲気・環境にも非常に期待をもって訪れられます。会議内容とともに後日よく話題に上ります。ちなみに昨年2009年は札幌で開催されました。
吉田:それは北九州市にとってはうれしいだけではなく、参加者の方々が北九州市を気に入ってくださるか私たちも気になるところでもありますね。
有川:参加者は会議終了後に観光される方もいるので、北九州の観光地をたくさん見ていただけるんじゃないでしょうか。市の観光パンフもお配りしますよ。
それに、今回併設で開催される技術セミナーのグラフェンや会議のスコープの一つであるナノカーボンをはじめとした炭素材料技術はもともと石炭・コークスなど石炭技術の延長線上にあるとも言えるので、歴史的に炭鉱が関連した都市が多かった北海道と北部九州は大学の炭素科学研究者も多いんです。そういう意味でも北九州での開催はぴったりだと思います。
吉田:ありがとうございます。勝手ながら社長がずいぶん北九州びいきのように感じてしまったのですが、ご出身はどちらなのですか?
有川:北陸出身ですが就職して以来ずっと北九州市に住んでいます。住まいは八幡西です。人生のうち半分以上が北九州での生活ですから、北九州をどう感じるかと言うよりも、もうすっかり生活者目線ですが。
吉田:うれしいですね。会議でも北九州人として本市のアピールをどんどんお願いします(笑)。
ところで、この会議には一般の方も参加できるのですか?
有川:もちろんできますので、会議のホームページをご覧ください。10 月20 日まで申し込みを受け付けしています。学会だけでなく、フラーレンと同じ炭素原子の結合からでき最近エレクトロニクスを中心に話題の多い「グラフェン」の技術セミナーも開催されますが、これは本会議とは別に参加することができます。これから研究をはじめる方や学生の皆さんにも分かりやすい内容になっていますし、気軽に参加していただけますよ。
吉田:多くの方が参加されることと会議のご成功を祈っています。参加者が多いとそれだけ北九州のPR にもなりますから(しつこいですね・・・)大いに期待しています! 本日は、ありがとうございました。
【第23 回マイクロプロセス・ナノテクノロジー国際会議(MNC 2010)】
日程:2010 年11 月9 日(火)~12 日(金)
場所:リーガロイヤルホテル小倉
※詳しくは、こちらから↓
http://imnc.jp/2010/japanese2010.html
MNC2010案内状 (PDF:22KB)
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